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油絵肖像画【実例・比較】技法研究

油絵肖像画【実例・比較】技法研究

これまでもお陰さまで、多くのお客様に似顔絵をご注文頂き、ご愛顧頂いております。
 
また、その間に油絵肖像画の技法研究と練習も続けております。
 
ご依頼頂いたお客様を始め、関係各位の方々には大変感謝する次第です。

このページでは、実例を交えつつ、油絵肖像画の技法研究に関わることを紹介しております。
 

それでは早速
作品を紹介していきますね!

目次

作画行程|油絵肖像画の技法研究

2021年の作品です。実際には完成していませんが、作画の行程として紹介します。
 
ポイントとして、最初にアンバー系の色でキャンバス全体を塗ります。
 
こうすることで下地が肌のトーンに近い中間トーンになりますので、色飛びせずに描き進められます。
私の場合は、テレピン油という揮発性の油を使います。
 
テレピンは主に、最初の段階や、他の粘度の高いオイルと混ぜて使います。
厚く塗る場合などには向いていません。
 
テレピン油はすぐに乾きますが、その後の絵具と適度に混ざる為、
上から色を重ねていく際に適度に馴染み描きやすいと思います。
 
このまま、アンバー系統の色で少しずつ描き進めます。
 
ある程度、画面が乾いたら、ウェットオーバードライで固有色を重ねていきます。
 

アンバー系統の色で描き進める
アンバー系統の色で描き進める
ウェットオーバードライで固有色を重ねる
ウェットオーバードライで固有色を重ねる

小磯良平作品油絵肖像画の技法研究

同郷、神戸のアーティスト、小磯良平さんの作品を模写してみました。
 
神戸の六甲アイランドには、神戸市立小磯記念美術館という、素敵な美術館もあります。
 
上品な色使いと正確なデッサン力、色の位置の的確さなど、気品のある画風で大変好きな画家です。
 

因みに、小磯良平さんのお弟子さんから沢山キャンバスを頂いたことがあるのですが、
 
その方が言うには小磯良平さんは、
サップグリーンにアイボリーブラックを少し混ぜたものをシルバーホワイトで溶いて
下色を塗ったものを支持体に使っていたそうです。
 
※支持体というのは、絵の具を乗せるときの紙やキャンバスなどの事です。
 
頂いたキャンバスにも既にその処理が施されており、
実際に使用してみると人物の影の部分との相性がとても良かったのを覚えています。
 
この様に、最初から支持体に色
良かったら参考にしてみて下さい。

小磯良平作品の模写

今回の模写は、ポイントを絞ったものなので、大雑把にしか描いてないのですが、
その分数をこなしたほうが、大局観は早く身につくかと思います。
 
こちらは油絵ではなく、デジタルペイント、使用したソフトはPhotoshopです。
 
先程紹介した、下地の色を利用しつつ、なるべく油絵で描く時を想定しながら研究します。
 
小磯良平作品は、その画面内での「色の位置」が的確なのですが、
 
色数を制限し、画面内で絵の具をまぜる事で、
グレーズを主体にしなくてもまとまりのある画面を作ることが容易になります。
 

小磯良平作品は「色の位置」が的確
小磯良平作品は「色の位置」が的確
色数を制限し、画面内で絵の具をまぜる
色数を制限し、画面内で絵の具をまぜる

油絵肖像画の一般的な描き方

油絵肖像画の一般的な描き方

現在、日本で主流なのが非常にリアルな、写真の様な人物画や肖像画です。
例えば千葉県にあるホキ美術館に展示されている様な画風です。
 
写真の様なリアルな作品に仕上げるには
技法的には比較的古典的、伝統的な技法を多く使って制作するのが、
一番確実で、時間的にも速く仕上がるのではないかと思います。
 
基本的にどの作品もほぼ同じ作画行程で制作し、
それぞれの経験に基づき、精密に計算して計画的に描き進めます。

誤解の無い様に申し添えますと、
各々の作家には個性があり、画力も魅力も様々です。
 
また、上手い人はどんな描き方をしても上手く描けるとは思いますので、
それぞれの作品での創意工夫がある上での大局的な話と受け取って頂ければと思います。

古典技法の一般的な作画行程

その上で、古典的な肖像画の作画行程をざっくりと簡単に説明しますと
 
グリザイユ(白黒)やカマイユ(有色の単一色)でディテールまでを仕上げだ後に、
グレーズ(透明色)やスカンブル(こすりつける)で色を重ねていき、
 
最後に不透明などで固有色の表現やメリハリをつけるといった行程です。
 

支持体について
 
写真の様に描く画家の場合、 
麻のキャンバスの様な粗いものではなく、板の上に白亜地やジェッソなどを重ね塗りし、
耐水性の紙やすりでツルツルにした下地が好まれます。
 
ディテールを描く時に、その方が圧倒的に描きやすいのです。
 
こちらの完成時にタブローを塗れば、より美しい光沢のある画面になります。
 
麻のキャンバスを使用する際も、目の細かいものがディテールの表現には向いていると思います。
 
しかし、これも特に決まりはなく、それぞれの作家の個性で選び、表現されています。

 
実際にこういった行程を踏むことで完成度の高い「静謐」な作品に仕上がります。
 
この油彩の技法は、とても計画的で、職人的な技術と、油や絵の具についての知識も必要とされます。
 
特に有名な画家の作品は、透明感のある肌質になり綺麗で格調高く完成度も申し分ありません。
誰が見ても上手いと感じる画力の完成度の高い作品の評価が高いのは当然でしょう。
 
一方で、計算されているがゆえに、
躍動感の無い作品となってしまうリスクも併せ持った制作スタイルでもあります。

実験から学ぶ|油絵肖像画技法

完成した油絵作品比較

1枚目の写真は、油絵で完成させた作品です。一度乾燥させてから加筆しています。
 
2枚目の写真は、完成した油絵作品をパソコンに取り込んで、加筆したものです。
 
2枚の写真を比べてみると、2枚目は更にディテールを描き進めたのですが、
1枚目の方が油絵の良さを残していおり、良い印象を受けます。
 
油絵でのディテール表現では無いので、一概には言えないのですが、
丁寧に描き進めようとすると、ある段階から曖昧な雰囲気になる傾向が私にはある様です。
 

油絵で完成させた作品
油絵で完成させた作品
パソコンに取り込んで加筆
パソコンに取り込んで加筆

制作の途中から意識すべき点

  • 描き進める所と描かない所の緩急
  • 描かない所も美しく魅せる

 
この点をよく理解しセンスを磨き経験を積めば、ラフの段階で残すべき部分と描き込む部分のバランスも改善出来、作品としてのレベルが上がるという事を学びました。
 
ディテールを描き過ぎると最初の段階の魅力的な部分が無くなるということです。
作家自身の個性が無くなり、無難にまとまってしまうという感じでしょうか。

実験から学ぶ|油絵肖像画技法

youtubeなどの動画で、制作過程を紹介しているアーティストが多数います。
 
観るだけでも勉強にはなりますが、折角だったら、同じように描けるようにしたいものです。
 
全てではなく、気になる部分だけでも良いので有効に活用してみましょう。

技法のポイント

今回の動画での描き方は、目や鼻などのパーツごとに完成させる感じの方法です。
完成作品は格調の高い肖像画風に仕上がります。
 
予めパレットに、混色した絵の具を何段階かに分けて用意しておくのがポイントです。
 
油絵の具は乾燥が遅いので、この様な事が可能です。
アクリル絵の具にも感想を遅らせるメディウムはありますが、限界があると思います。
 

この様に使用する絵の具が限定しつつ、配合まで決まっていると、
 
ここの部分はこの色を使うといったやり方なので、鼻や目など、別々のパーツごとに完成させていき、
最終的に統合と言いますか、違和感なく完成させられます。
 
非常にロジカルで無駄のない、しかも完成度も高い方法の上、比較的短時間で完成させられるので、
私の描き方とは全く違いますが、勉強になります。

制作プロセス1

最初に木炭を使って下書きをしました。
木炭は伸ばしたりぼかしたりと色々出来て便利です。 
 
下書きを書いた後は、通常はシッカチーフで定着させます。
定着させないと、そのまま絵具と混ざってしまいます。
 
ここでは、更に下書きの上からオイルを載せて、上手く混ぜ合わせることで、
墨が過度に絵の具に混ざらないようにしています。
 
アンバー系の着色をしたオイルで人肌に近い感じで軽くですが塗っています。
 
この方法は悪くないので、
下書きをする場合はこちらのやり方が個人的には向いているかもしれません。
 
スピードも速いです。

制作プロセス2

次に動画の行程に見習い、パーツごとにディテールまでを極力忠実に着彩していきます。
 
オイルをスタンド系の粘りの強いものにしてしまいましたが、
スタンダードな溶き油の方が馴染んでいいかもしれません。こういうのも勉強になります。

木炭を使って下書き
木炭を使って下書き
パーツごとにディテールまでを着彩
パーツごとにディテールまでを着彩

学んだ点

この後も動画の行程に従い、顔全体を塗ってみました。
やってみると意外と難しくなかなかうまくいきません。
 
実は一度使ったボードにジェッソを上塗りした後、研磨していなかったので、
筆がスムーズに運びませんでした。
 
ツルツルにする必要は無さそうですが、目の細かい支持体を選んだ方が描き易そうです。
 
また最初の「混色の準備」も雑だったと反省しましたので、ここは改善ポイントです。
 
恐らく何度か試していくうちに、必要な混色や、量が分かってくるのだと思います。
 
絵の具の混色の加減と絵の具の量と、使うオイルの種類、使う筆と、下地など。
総合的に改善していくべき点が模写すると実によく分かります。

油絵の混色にあたりおススメの参考書

混色の際に参考になる一冊として、分かりやすいのがこちらの本です。
購入したのは10年以上前になるでしょうか。
 

絵の具のレシピ|視覚デザイン研究所
絵の具のレシピ|視覚デザイン研究所

一夜漬けの専門家シリーズ
 
絵具のレシピ
初めてそろえる基本色と混色サンプル
 
視覚デザイン研究所 編


参考作品と構成する色の紹介もわかりやすいですが、
 
日本の代表メーカー、ホルベイン、クサカベ、マツダ(スーパー)のそれぞれの色の特徴や
価格比較やおススメなども乗っていますので、そこが少しマニアックに楽しめます。
 
最初のステップとして参考とするものは、分かりやすいものが一番使いやすいと思います。
 
初心者の方はもちろん我々プロにも重宝する内容。
相性もあると思いますが一冊あると便利ですよ。 

まとめ油絵肖像画の技法研究

制作行程をしっかりと考える

いわゆる重厚な肖像画を描く場合は、古典技法に倣い、
グリザイユ、またはカマイユでディテールまでを一旦完成させるのが間違いのないプロセスの様です。
 
この方法では、基本的に単色をつかいますので、
筆のタッチを表現しつつ、しっかりとした描き込みも容易です。
 
また、描き込むべき箇所と残すべきところの判断もし易いです。
 
その後、グレーズ等で着彩を進めるわけですが
この際に、微妙なトーンの変化や全体の雰囲気も作りやすいです。
 
なので、この行程を踏まえつつ、不透明色を併用していくのが良いかと思いました。
 
作品も、直接キャンバス上で色を混ぜ合わせる私の基本スタイルとは趣きが全く違います。

改善すべき点を意識する

個人的な作品では、先程の様なディテールを追ってリアルに仕上げる感じなのはあまり好みではないので、
ウェットインウェットの技法をベースに、光のバランスをより意識した作品を描いていきたいと考えています。
 
その際には、切れの良い筆捌きで効果を出したりといった事を意識していきたいですね。
 
また、今迄は比較的アバウトだった、支持体や油、筆にもこだわっていきたいと思います。
 
油絵、特に絵の具などの画材は高いのでなかなか思い切った使い方も出来ない時がありますが、
ビジョンをしっかりと持って、無駄のない仕事をすることもとても大切だと思いました。
 
いずれにせよ、油絵の具でしか表せない良さがあります。
そこを大切にして、今後も想いが伝わる作品を制作していきたいと思います。
 

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